一般社団法人つなぐ子ども未来

つながるきっかけを生み出す
みんなのれいぞうこ

2024.03.31

食料支援のハードルを下げるために

「みんなのれいぞうこ」とは家庭困難感を抱える家庭へ支援をつなげることを目的とした「公共冷蔵庫」です。利用者のこども食堂やフードパントリーに対する心理的・物理的な壁があるとわかったことがきっかけです。「受け取り場所が遠くて、欲しくても取りに行けない」「仕事など時間的都合で受け取りに行けない」「こども食堂=貧困」というイメージから、「こども食堂へ行くことに抵抗感がある」「困っていることを知られたくない」などの理由から本当に必要としている家庭に支援が届いていないことがわかりました。
そこで、食支援のハードルを下げ、より多くの本当は「困っているキモチ」を抱える家庭に寄り添い、食の面で生活を支援したいという思いでスタートしました。
「みんなのれいぞうこ」は休眠預金活用事業を活用し、特定非営利活動法人ボラみみより情報局と一般社団法人つなぐ子ども未来が、中部圏地域創造ファンドの助成を受け実施しています。
また、冷蔵庫は24時間テレビの助成金(真如苑子ども食堂支援助成も)を活用し、購入しました。このように様々な助成金を活用し、地域に公共冷蔵庫の設置が進んでいます。
安藤さんはもともと子ども・コミュニティ食堂とフリースペース つなぐハウスを運営しています。つなぐハウスを運営していく中で「みんなのれいぞうこ」の構想に至ったと言います。
「つなぐハウスの居場所っていうのは子どもの生きる権利や遊ぶ権利を子どもと一緒に具現しているんです。その緩さを地域の中でつくっていけると、ただ遊びに来る子の中にいろんな課題を持った子にたくさん出会います。この場を通してしっかり向き合えるっていう居場所があるからこそ、非対面っていうところにも構想が膨らんだのかなと思います。」(安藤さん)

 

「みんなのれいぞうこ」利用対象と流れ

 利用対象者としては生活困難感を抱える家庭です。セキュリティーのついた冷蔵庫から自分の都合がいい時間に24時間いつでも非対面で食品を受け取ることができる仕組みになっています。
登録方法は Googleフォームから申し込み、そこから LINE登録をしていただきま
す。情報はLINEを通して発信されます。「何日に食品が入ります」と情報発信をして、そこから利用者は応募をします。その人の情報や利用履歴をもとに決定します。決まった方には個別連絡をし、希望に添えなかった人には全体発信します。利用者さんにセキュリティー番号を個別で教え、各自の箱を開けてもらい食料品受け取ることができる仕組みになっています。利用者には利用説明書を送付し、さらに誰がどの冷蔵庫を使用したのかわかるようになっています。
非対面だからこそ、リスクはついて回ります。「万引きや盗難、物損などはカメラを設置したりとか、利用者さんとのやりとりを密にして、寄り添ったメッセージのやりとりをしていくことでリスクを下げています。」(安藤さん)2022年7月に「みんなのれいぞうこ」事業が本スタートし、今まで 1回もトラブルは起きていないそうです。
利用者さんの登録元は、厚生労働省の「ひとり親家庭等子どもの食事等支援事業」で生活に困難感を抱える世帯に支援した際につながった方々。
今は LINEグループで「みんなのれいぞうこ」に希望される方だけ移動してもらっています。現在のLINE登録者数は200名ほど。新規の人はこれから取り込んでいきたいと安藤さんは言います。
 

一回の“助けて”を言いやすいようにするための冷蔵庫

ボラみみより情報局と一緒に、この事業名を「みんなのれいぞうこ推進委員」という名前にしました。「食品だけではなくて、ボラみみさんや市民活動推進センターなど違うチャンネルの人も、フードバンクも入る、そういった地域を守るためにチャンネルが違いながらも集まるということで、地域の包括的な支援を行政とはまた違った角度で、穴から漏れている人たちを拾って自分たちのところで解決できないかなっていうことで広げたのが今回の構想です。」(安藤さん)

 「みんなのれいぞうこ」はつなぐハウスのある昭和区社会福祉協議会からスタートしています。
「つなぐハウスの外に置かなかったのは、非対面で取りに行った先での支援、関係性を結んでほしいからです。なのでまずは社会福祉の中でのエキスパートである社会福祉協議会に協力してもらって外に設置しています。」(安藤さん)
冷蔵庫の箱は8~9個しか受け取り口がないため、対面のフードパントリーに比べて決して数は多くありません。それでも非対面でやる意味があると安藤さんはいいます。「結局対面で渡すっていうその場に行って、食料くださいというハードルの高さとか、コロナであったり、やっぱり日々お仕事されたりとか、時間的に難しいとか、そういった課題がすごくあって。ロッカーじゃなくて冷蔵庫にしたっていうのは非対面であるがゆえの関係性が取れていない中で、まずは安心して食材を取りに来てもらって、そこから支援に繋げていくっていう。ハードルを下げて信用度をつくる意味で高額ではありますが、冷蔵庫じゃないと意味がないと考えて使っています。」(安藤さん)
ストッカー型の冷蔵庫は三温度帯に対応しているため、いただいた
スイカやメロンなどの果物、冷凍フライなどの冷凍食品も入れることができました。利用者さんからは「果物なんて久しぶりに食べました。嬉しくて昨日は娘と「おいしいね」と幸せな時間を過ごしました。ありがとうございました。」との声がありました。
つなぐ子ども未来は一団体としてではなく、児童相談所や民生子ども課など、区単位の窓口と密につながっています。しかし一方で「支援を必要としている人たちが地域の中で関係性ができないとわざわざ遠方から来てもらうのは理にかなっていない。ずっと支援を自分たちのところでやっていくというよりも、一回の“助けて”を言いやすいようにするための冷蔵庫です。」と安藤さんは言います。
「ひとり親と限定しないことによって、見えない障がいがたくさんあり、困ったときのひとつの窓口として利用してもらう。ずっとはお世話できないけれど、そこから繋げていくところが大事かな。」(安藤さん)
 

課題と冷蔵庫を通して目指す未来

 現在安藤さんは個人支援として生活相談もされています。しかし夜中に連絡がくることもあり「今は個人でやっているから対応できているけど、組織でやっていくとなったら、専門機関に繋いで建設的にしていかないといけないと思っています。個人でやるところから手放す先をきちんと見つけて繋げていくっていうのが大事ですね。」(安藤さん)と課題を話されました。
現在はLINEGoogleフォームなどを活用していますが、今年度中に休眠預金活用事業を活用し、ひとつのアプリ内で完結できるような仕組みを作っていきたいと話されていました。そのシステムの中に困難状況のアセスメントシートを作成し、優先度をつけてお渡ししていけるようにしていきたいと話されていました。
「みんなのれいぞうこ」のプラットフォーム化をして、それぞれの団体や機関がもっている機能を生かしていく。あくまでも冷蔵庫は食糧支援の一部であり、そこから就労支援、学習支援、生活衣服、住居等いろんなカテゴリーの団体、社協に繋いでいきたいと話されました。
「防犯カメラ側から話せるカメラを買おうとしていて、そのカメラから「今日ほしいです」っていう人が言える窓口をつくれたらいいなと思います。垣根を下げる。そこに行けば平日のオンタイムじゃなくても誰かがいるんだよみたいな。テクノロジーが上手く使えていくといいな。」(安藤さん)
今後は現場の中で見えてくることが、どのような形でめぐっているのか、結果を残せるようにしていきたいと安藤さんはいいます。現在はアンケート調査をしておらず、そのまま感想をいただいています。そのため、こちらが利用者にどういうお声がけをしたら良いのか現段階では不透明な部分が多いです。
「今後きちんと一定の分析をし、支援をしたあとの成果を可視化することで、フードロスや食品難などの社会問題解決に貢献していることを示していきたいです。」(安藤さん)
 
 

2023年度ver.
~昨年との活動の変化についてお伺いいたしました。~

 

◎主な事業内容
こども・コミュニティ食堂 / フリースペース つなぐハウス=第3の居場所 / お弁当・フードパントリー / 社会体験・学習 / 個別支援・包括支援 / 公共冷蔵庫:みんなのれいぞうこ
◎活用している資金源 
キユーピーみらいたまご財団
全国こども食堂支援センター・むすびえ
子ども食堂基金
全国中央募金赤い羽根フードバンク事業
愛知県共同募金赤い羽根子ども食堂助成
名古屋市子育て支援助成
CBCチャリティ募金
◎活動拠点 
名古屋市昭和区長戸町5-46 つなぐハウス
◎URL
みんなのれいぞうこホームページ