一般社団法人こどもの居場所サポートおおさか

活動団体をサポートすることで子どもの居場所を支える

2024.03.31

活動の原点

元々小学校のPTA会長をしていた横田さん。そんな横田さんが今の活動をするきっかけとなったのは、自分が会長を務める母校が統廃合になり、残ったあと地をプレーパークとして運営することになったのがはじまりです。プレーパークで色んな子どもたちと接していくうちに、しんどい生活をしている子ども達が見えてきて、ご飯を食べられない子ども達のために、学習の一環として調理室を使って調理実習を開催。調理実習に参加した子どもたちが、人に食べさせる喜びや、みんなで食べる楽しさを体験してもらうきっかけになりました。
「人から与えられたものだけで食べていくのではなく、自分の生きていく力をはぐくむために、自分のお小遣いで買える範囲で買い物をし、3品つくるということをやっていました。生活保護の子どもは親が働いている親の背中を見ることができないので、子どもがまず自分で働く像を作っていくことが必要だと感じていました。」(横田さん)
 

親を責めない「えらいな、大変やったな」の共感の声掛け

現在は、大阪市西成区に拠点を構えるこどもの居場所サポートおおさかの代表としてこども食堂等居場所を支える活動をしていますが、中間支援だけでなく、ここでもいくつかの支援世帯と直接関わっています。個別支援をする上で、横田さんが大事にしていることは、親を絶対に責めないことです。「責めるのではなく、『おかあちゃん大変やな、わかるわかる、しんどいよな。仕事しながら子育てするの大変よな』と共感をすることで、お母さんも世間の目から解放することができるんです。お母さん自身も、虐待をしていることに対しては後ろめたさがあって、世間から白い目で見られていると感じている人もいる。『えらいな、がんばっているな』という言葉をかけることで、ようやく自分の気持ちを吐露して伝えることができた方もいます」(横田さん)
こども食堂は、子どもが外にSOSを出せる場でもあります。親を責めて親がこどもをこども食堂に行かなくさせないようにするためにも、声のかけ方にとても気をつかわれています。
 

「最近何食べたん?」子どもが話しやすい一言を

子どもが食べられているかは親からではなく、子どもとの日常的な会話から把握します。「お腹すいてないん?」『空いている』
「いつから食べてないん?」すると『今日から』とか『お昼から』などの返事が。また、ぽっちゃりしているからと言って食事が十分なわけではありません。ネグレクトの家庭はお菓子だけを食べているケースも多く、血液検査をしたら栄養失調ということもあります。「『ごはん食べれてる?』って聞くと『うん』と言うので、『ごはんいつ食べた?何食べてんのん?』と聞くことを大事にしています。」(横田さん)
 

支援者に合わせた食糧支援

支援世帯へ食品を渡す際、家庭状況に合わせて提供頻度、食品内容に工夫をしています。経済的に困窮している家庭へは、米やおかず系。見守りなどの安否確認をするために配布している家庭には、子どもが喜ぶお菓子やお母さんのおつまみなどを渡しています。活動回数は週1回、5日~1週間分の食糧を渡す所もあれば、月1回2~3日分を渡しているところもあります。「虐待がある場合は、見守りと安否確認をしたいから、たくさんは渡さず、子どもの顔をマメにみられるようにしています。家族が多いとか、虐待があるわけではない場合は、食糧が足りないだけなので月1回、お米を渡すことが多いです。」(横田さん)
 

こどもの見守りは他機関との連携を通じた支援を

見守りの活動では他団体や学校、相談機関などと関わる機会もあります。大阪で産前・産後ケアや母子生活支援活動を行っている廣瀬さんとは、食フェスタを通じて出会い、それ以来、要支援者の相談にのってもらったり、依頼を受けて見守りに関わっています。
(食フェスタとは?:こども食堂等の食支援活動が地域で安定的に・持続可能なかたちで広がるため、多様な方々との連携が欠かせません。「食でつながるフェスタ」では、開催を通して地域の課題を共有し、目指すゴールに向けて一緒に取り組んでくれるネットワークづくりを目指します。)
 
サポートおおさかで個別支援の相談員をしている吉村さんは、個別世帯へお弁当や食料配布による訪問をしている団体から様々な相談を受けています。その中で、助言していることの一つが、他機関との連携における活動団体の立ち位置です。こども食堂は、行政や学校からの指示で支援世帯とつながっているわけではありません。こども食堂だから心を開き、つながった支援者を代弁する立場として関わってほしい。専門職ではないから、責めず励まし、寄り添い続けることができる。「相手を尊重した聞く姿勢」「相手に気持ちよく思いを話してもらうこと」それは相談につながるはじめの一歩。サポートおおさかでは個別相談票を活用し、団体がどんな困りごとを感じているのかを把握しながら、団体の活動を尊重するところから関係を築いています。子どもからの相談支援も、団体からの相談支援も「相手を尊重した聞く姿勢」は一緒です。
 

個別支援の手前の、気づくチカラが子どもを救うチカラになる

こども食堂には様々な事情をもった子どもたちがきます。「個別支援は、依存された時、持ちこたえられるだけの覚悟が必要です。途中で投げ出してしまうと傷つくのは子どもです。こども食堂は個別支援まではしなくても大丈夫だけど、SOSを出しているかもしれないという目で子どもをみてもらいたい。発見はしてもらいたいなと思います。何か気が付いたことがあれば近くの民生委員や行政に伝えたらいいよと助言もしています。」(横田さん)
そこで、今後は発達障害を抱える子どもと大人の接し方を学ぶ学習会の開催や、個人情報の取り扱いや守秘義務に関する研修会の企画などを通じて、こども食堂が自分たちでできること・できないことを自覚する学びの場、個別支援を行う団体が孤立しないためのピアラーニングの機会を作ることを目指しています。
 

多様な子どもの居場所を支えるために

もともと、こどもの居場所サポートおおさかは全国各地で広がる
こども食堂の運営基盤を支えるために食品衛生等研修会の開催、立ち上げ支援、ネットワーク形成、企業連携を想定した休眠預金の活用による公益活動として始まりました。ですが、コロナ禍でこども食堂は会食型からフードパントリーやお弁当配布を始める中、様々な生活苦や家庭事情を抱える子どもと出会ってしまった。こどもの居場所サポートおおさかに登録する170団体のうち約3割が個別支援をしていることを把握したことから、個別支援団体向けの相談窓口を開設しました。
また、企業と連携することで、集めた寄付食材を府内のこども食堂等居場所へ分配するなど、行政・社協・企業・母子生活支援施設等福祉施設、それぞれのホルダーとの関係を築いていくことを大切に、食を通じた居場所の支援の輪を広げています。
 
 
 

2023年度ver.
~昨年との活動の変化についてお伺いいたしました。~

 

 
 
 
◎主な事業内容
・こども食堂サポート支援・・・相談窓口、寄贈品の配布、研修開催や情報発信。
・こどもへの食育活動・・・こども食堂等居場所での食育研修およびオンライン研修の実施
・こどもや家庭への支援・・・たこやきプロジェクト、相談事業
◎活用している資金源 
キユーピーみらいたまご財団
休眠預金活用事業
厚生労働省ひとり親家庭等子どもの食事等支援事業(令和4年度)
◎活動拠点 
大阪府大阪市西成区松1丁目2-7
◎URL
こどもの居場所サポートおおさかホームページ